至高の逸品、「夏バネ(スズキ)の洗い」。
暑さを吹き飛ばす、岡山の夏の風物詩
岡山全域で漁獲されるスズキ。一年を通して水揚げのある身近な魚ですが、夏の風物詩としての実力は一流です。地元では、夏バネ(スズキ)の洗いをテーマにプロモーションに取り組んでいます。
~今日は岡山の花火大会。
夕暮れ時から京橋たもとの割烹の二階、河岸沿いの座敷に構えたのは表町のおやじ連。
ようやく暮れなずむ旭川の河原から湧き上がってくる人々の喧騒で京橋を渡る路面電車の響きもかきけされ、花火の始まりを待つときめきを載せて窓の縁からようやく涼風がさし始めた。
おりしも宴の始まりに、膳に運ばれたのが「夏バネ(スズキ)の洗い」。
一同待ってましたの顔つきがほころんだ。
切り子の大鉢にかち割氷を敷き詰めて大葉ととさかのりをつまに沿え、ざくっと盛られた白身の涼しげなこと。
そぎ切りにした切り身を桶の氷水にしっかりさらし、芯まで冷えが回ると身はちぢみ、肌は白く霜降りとなってまるですりガラスの細工物のよう。
のぞきに張られた薄口しょうゆに青唐辛子の辛いやつをほんのヒト欠けちぎり入れ、身の端をちょっと浸して口に運ぶ。
ヒヤッと冷たさの後に浅い旨みとほのかな甘み。
さらっとした舌触りと生きた身の弾力が程よくかじかんだ切れの良いかみごたえ。
活きたスズキを板場でしめて、ぶりぶりする身を即座に切り下したものでなければぜっったいにできない技である。
盃に七色の光が映ったら外から大きな歓声が…、間髪入れずドーンとなった花火。
昼間の暑さなんてどこかにくらました。
今は昔の「夏バネ(スズキ)の洗い」。今宵この贅沢。~
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